金曜日の夜からの二日間、屋根はあるもののほぼ野外で寝ていました。写真の奥に見える天下一武道会場みたいなのが寝床。分かりにくい写真しかなくてすんません。とりあえず、犬が普通に中も外も関係なく歩きまくっていました。
布団もないんだろうなと思っていたので布団を分けてもらえただけで十分満足。せっせと寝床を作ります。完成。実際に半分以上の先生は床にそのまま寝ていました。
ベレム島は一台も車がないのでものすごく綺麗。人がぎりぎり歩けるだけの道が浜沿いにずーっと続いています。
散歩に疲れて教会の前の港にさしかかったとき、ちょうど日が沈みました。港というか、ただの船着き場なんですけどもね。徐々に金色から真っ赤に染まる島と海。これは心が洗われますね。
なんて思っていると、急にトイレに行きたくなりました。離島ではその土地の人は海の中で用を足します。日本のような汚い海を想像するなかれ、離島の海はプールより透明な水ですからね。でも、日が沈んでしまったし海はそろそろ怖いなぁなんて思いながら、ダメ元で同僚に聞くとトイレはあるとのこと。指さされるままに外にぽつんと立っているバラック小屋を開けると中にはドッポントイレがありました。おぉ、懐かしい。ドッポンでも水洗でも便座があるなら文句ないや、やったーと思って、便座を開けておしっこを出した瞬間に叫んでしまいました。
うぉぉおぉっぉぉぉおぉ!
おしっこの軌道を目でおっかけてびっくり。人生で最大数のゴキブリを見ました。便座の裏からうんこの落ちる穴に至るまでびっしりとゴキブリで真っ黒になっていました。逃げようと思ったのですが、すでにおしっこは出始めています。びびったらおしっこが止まるなんてあんなの嘘ですよ。出始めならまだしも我慢してたおしっこは出始めてしまえばびびろうが何をしようが止まりません。
じょじょじょじょじょー。
ゴキブリさんに直撃しているんですが、どうしたことでしょう。微動だにしないんです。こ、これは。おしっこ耐性がついているんですね。もうそれはそれは真夏の海水浴帰りに浴びるシャワーのごとく、ゴッキーたちは気持ちよさそうにおしっこをかぶっています。
あかん、これは無理や。うんこは絶対できん。出そうとした時に、自分のおしりを虫が這い回るんとかホラー漫画の世界や。よし、次からもう海でしよう!海は綺麗で大きいぞ!最高のウォッシュレットや!なんて心に誓いながら出てくると、外で同僚が一人心配そうに待ってくれていました。そうです、悲鳴を聞きつけてきてくれたのです。たいしたことはない、ゴキブリにびびっただけやと言うと同僚は爆笑し、次から神父さんが使う用のトイレが二階にあるから特別にそっち使っていいよ、とな。
ごめんなさい。私はほんとにへたれです。この二日間、ずっと神父さんのトイレをつかっていたことを素直に認めます。悔しくもなんともないです、アレばかりは無理。
リトリートですが、まあイメージとしては職員研修みたいなもんでした。最大の誤算は子どもも来るとおもっていたのに教員だけでした。その島に住んでいる生徒はのぞきにきていましたけどね。
上の天下一武道会場みたいなところが、寝床であり研修会場なのでケジメもへったくれもありませんでした。ゴロゴロしながら神父さんの講義を聞いている先生たち。どこが始まりでどこが終わりなのかもちょっと分かりません。以下思い出しながら記録してみたタイムスケジュール。やばいです、もう完全に寝ることと食うこと以外していません。基本的に先生たちは座位をとっていませんでした。ゴロゴロ研修。
金曜日
午後
四時 ウエノ島の港より小舟で出発
四時半 バレム島到着 積み荷を下ろす
五時 散歩スタート
六時 日が沈む 飯食う
七時 神父さんの講義みたいなの
八時 先生たちはほとんどスヤスヤタイム
九時 真似して寝ようとしたら校長にまだ寝る時間じゃないと怒られる
十時 みんなで歌を歌う 校長にマッサージ
十一時 何か食え食えと言われるが断る
十二時 寝る
土曜日
午前
三時半 起こされて桟橋へ
四時 桟橋で真っ暗な中みんなで歌を歌いその後瞑想
五時 寝る
六時 起こされる
七時 ミサ
八時 寝る
九時 神父さんの講義みたいなの
十時 寝る
十一時 海水浴
十二時 食う 寝る
午後
一時 寝る
三時 神父さんの講義みたいなの
四時 寝る
六時 食う 寝る
七時 みんなで歌を歌う
八時 寝る
九時 校長にマッサージ 寝る
十時 起こされて歌を教え込まれる
十一時 寝る
日曜日
午前
六時 起こされる 食う
七時 ミサ
八時 神父さんの講義みたいなの
九時 寝る
十時 散歩
十一時 寝る
十二時 食う 掃除
午後
一時 寝る
二時 港より出発 帰る
神父さんの一貫した講習テーマは「協力することの大切さ」でした。
一人で出来ることなんてたかが知れているけれど、誰かと手をつなぐことで出来ることが沢山ある。というのが大要。フルのチューク語講義でさすがに理解できなかったので同僚がちょこちょこ教えてくれました。
最後に校長とチームを組んでディスカッションしたんですが、不意に私の宗教を尋ねられました。よくある質問なんですけど、校長はシスターでもあるのでちょっと重みが違います。シスターとはいわばキリストに捧げられた者、女としての幸せは全部キリスト様に捧げている身です。だからこそ、下手に嘘をつくのもいやだったので「キリスト教じゃないよ、ごめんね。ちょっと日本人の宗教観は複雑なんだ。」と答えると少しさみしそうに「分かった。」と言った後どっかにいなくなっちゃいました。
そのあと、リトリートの仕上げとして職員の前でグループ毎に発表をしていく場面があったのですがそこでシスターが全職員の前でうちのグループの代表として発表してくれました。
ちなみに、最後のディスカッションの質問項目は三つ。「あなたの心には誰かを受け入れるだけの場所がありますか?」「あなたが今対峙している人の心にはあなたを受け入れてくれる場所がありますか?」「では神様は私たちの心のどこにいるのでしょうか。」
だいたい全ての講義において最後には神様につなげるような流れなっているんです。私にとってはテーマとしてもすんなり答えられる質問だし、大事なことだなと思うんですが神様が入ってくるとどうにも素直に入ってきません。まぁ、だからディスカッションの時にちょっとシスターにつっこまれてしまったのでありまして。
話を戻して、シスターの発表のこと。シスターはこうまとめてくれました。だいぶ要約します。「私にはだれかを受け入れるだけの場所があります。そして、私のチームのメンバーには私を受け入れてくれるだけの場所がありました。ただ、コータイの中には神様の居場所はないようです。コータイはクリスチャンではありません。でも、私たちはそれでもコータイと仲良くできるはずです。私は仲良くしたいと思います。」
チューク語だったので、正確な訳ではないと思いますが、大約は合っているはずです。職員みんなの笑顔と拍手に包まれて無事講義は終了。ありがとう校長。
昼間はハエと夜は蚊との戦い。目的がいまいち分からんし、スケジュールもあやふや。疑問を感じることばかりで正直かなりきつかったけど校長の最後の一言で参加してよかったと思えました。国民性みたいなのを自分が変革できる訳もないし、すべきじゃないと思うし。なによりこの国のそういうところ嫌いじゃないし。このだらだらずるずる動いていく国の中で自分が出来ることを作っていかなきゃいけないんでしょうな。
二日間お疲れさまでした。